まずは過去問を入手する
当たり前のようですが、試験というのは過去問を見なければ問題の癖がわかりません。まず始めは、対策をとるための情報を過去問から読み取ります。
実技試験の過去問は、一般財団法人日本ファッション教育振興協会より販売されています。
パターンメーキング技術検定試験2級試験問題 解答・解説集【改訂版】
こちらの本は、2006年~2008年までの3年間に出題された過去問題が掲載されています。随分古いなとお思いかもしれませんが、この年代からあまり出題傾向に変化はありません。実際に私が試験を受けたときも同じような内容でした。
もうひとつは、日本ファッション教育振興HPより前年の試験問題が掲載されていますので、そちらも忘れずにチェックしましょう。最新の問題がわかるうえ、傾向と対策、模範解答まで掲載されています。
過去問から「合格ライン」を探す
過去問には「模範解答」が掲載されています。模範解答には、合格ラインの「数値」が記載されています。この数値がポイントです。
それぞれバストライン、ウエストライン、ヒップライン、肩幅など、数値をすべて紙に書き出してみてください。そうすると、大まかな「合格ライン」の数値が割り出されてきます。この数値は、今後練習をしていく際のチェック表としてそのまま取っておきます。
実際には、試験当日のトルソーに合わせて大きさを調整しなければなりませんが、実際の合格ラインの大きさを知ることはとても重要です。
試験会場のトルソーをチェック
私は独学でしたので、一度実技で落ちたときに試験のトルソーと自宅のトルソーが明らかに違うことに気づいていました。2度も失敗はしない、私はそう思い、合格するためならと、問合せの電話をしたのです。
「あの、すみません、以前実技試験をドレーピングで受けたものです。その時トルソーが硬くて血が出てしまったのですが、他の種類というのはあるのでしょうか?」
なんとも迷惑な受験者で申し訳ありません。(体験記③「え!フルドレ?!試験会場でのどよめき」)
親切にいろいろと聞いてくださったり、説明をしてくださったのですが、替えのものはありませんということでした。
ただ幸運だったのは、電話口から「~、工業用のトルソーなので、~」という単語を聞き逃さなかったことです。私はそこから対策をとることができました。
会場によってどういったトルソーを使うのかは違うようなので、一度確認してみるといいかもしれません。
合格ラインのトワルを一度作る→ゆとりを肌感覚で覚える
ここからは私の特殊なやり方かもしれませんが、何度も練習する中で、これが一番正確でした。合格ラインの数値を割り出したのは、ゆとり分を知るためです。そしてこれは結果論です。
肌感覚でというと不確実な表現ですが、人間の「感覚」というものは、非常に繊細で精密なのだということを、当時の私は思い知らされました。
私ははじめ、この合格ラインを割り出した後に何度もドレーピングで練習しました。しかし1度たりとも、意識するだけでは、合格ラインで作れなかったのです。
そこで一度、合格ラインの数値でジャケットを組み、ゆとり分を確認することにしました。
そこで思ったのは「感覚で覚えるしかない」という、多分普通ではない感覚。。。
私は、袖ぐりと裾からそれぞれ手を入れて、バストライン上のゆとりを確認しました。ふむふむ。何度もトルソーと生地との浮き具合といいますか、離れ具合といいますか、目と手でこのゆとりの感覚を体に刷り込ませるように覚えました。
そしてその後、ドレーピングでジャケットを組み立てたのです。
BL、WL、HL、すべて合格ラインでドレーピングできていたのです。そのときの感動は今でも覚えています。これで行ける!と希望の扉が開いた瞬間でした。
これ以降、ジャケットのゆとりはこんな具合なのだということが肌感覚でわかってきました。
このゆとり分量がわかってくると、試験でどんなトルソーがきてもおなじゆとりで作ることができます。試験ではトルソーに合わせたサイズで作らなければなりませんから。
実際の試験では、トルソーに合っていないものがあったと傾向と対策でコメントされているぐらいですから、実際のトルソーに合わせられるように練習しましょう。
試験では、練習したけどどう見てもサイズがおかしい、もうどうすればいいかわからない、そんなことがあるかもしれません。その時は「肌感覚で覚えたゆとり」を思い出して、チェックしてみましょう。(試験終わりに、受験者の完成したトワルを眺めると、トルソーに合っていないのが一目でわかるものも多く、私はとてもびっくりしたのを覚えています。)
※トルソーは家庭用と工業用があります※
今となっては当たり前のことなのですが、独学で初心者だった当時の私はそれさえも知りませんでした。工業用とは、すでにゆとり分が含まれているものを指します。同じサイズ(たとえば9AR)でも、ゆとりが入っている分家庭用のそれよりもやや大きいです。
自身が練習しているトルソーが家庭用の場合は、工業用に変換する必要があります。
(変換しなくても、実際に工業用の数値のままで練習すればいいじゃないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。あくまでもトルソーに合わせた服を作るには、感覚的なゆとりを覚えることも大事です。そうすることで、本番でもどんなトルソーで形が少し違っていても、パニックにならずに対応できます。もちろん、選択は自由ですので、気にしない方はこの部分を飛ばして読んでください。)
少し難しいですが、まず自分のトルソーと工業用のトルソーとの寸法差を調べましょう。
合格ラインの数値が工業用での寸法であることを考えると、自宅で練習する際は合格ラインの数値を若干変更する必要が出てきます。
話がわかりにくいのですが、合格ラインのトワルを「工業用のトルソー」に着せるとぴったり合いますが、「家庭用のトルソー」はそれ自体にゆとりが入っていないのでぶかぶかになります。つまり、自宅で練習するトルソーが家庭用の場合は、工業用トルソーとの寸法差マイナスしなければなりません。工業用キプリス9ARレギュラーと私の所有する家庭用トルソーを比較した場合は、Bは5cm、Hは3cmの差がありました。
大変面倒ではありますが、自宅のトルソーが家庭用の場合は、合格ラインの数値を補正して練習しましょう。
出題されるジャケット2種類から、あらかじめ数値を決めておく
実技試験では、前もって出題されるジャケットが2種類掲載されています。このどちらかが試験に出題されますよ、ということです。そして細かい部分のデザインの変更はありますが、ほとんどそのままの形で出題されます。なので、あらかじめデザインの数値を決めておきます。私が決めた項目は、
・ボタン位置・大きさ(バストラインから下に○cm、横に○cm、ボタン直径○cm)
・ポケット位置・大きさ(ボタン同様)
・ラペル幅
ほんの少しのことかもしれません。ですが、私にとってはこの少しの考える時間を減らすことで、精神的にすごく楽になりました。
実技試験は、本当に時間との勝負なのです。
<写真右>当時のノートを掲載しました。適当に決めていますが、試験開始直後にこのどちらかをシーチングに書き込んだことはよく覚えています。これだけで、5分は違うかも。
なるべく当日の動きが同じであるように、何度も練習しましょう。
時間に追われないようにするには、「次は、えーと・・・袖の作図か。」などの「一息つく時間を無くしていくこと」です。
頭で考えなくても、次の作業へと手が動くほどになると一気にタイムが早くなります。
パターンメーキング技術検定試験2級試験問題 解答・解説集【改訂版】
一般財団法人日本ファッション教育振興協会
定価:2,310円
パターンメーキング検定2級、筆者のドタバタ体験記はこちら
→ 実技試験(体験記①決意する・体験記②猛勉強する・体験記③試験の日)
→ 筆記試験(体験記④会場を間違える)
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2024/5/12 追記・編集