突然ですが、初心者の方が自分の原型を作図した後に降りかかってくる難題は何だと思いますか?そう、タイトルにもある通り「補正」です。
今回は、私自身何度も助けられた「補正の本」をご紹介します。いろいろと本は読んでいますが、初心者の方にお勧めの導入本として、参考にしていただけると嬉しいです。
「美しく着やすい 型紙補正」(著:圡屋邦子 ブティック社)
こちらの本は、2019年に発刊されました。意外と最近の本なのですが、設立が50周年を超えているブティック社から出版されています。
今回この本をご紹介するにあたっては、以下のポイントを重視しました。
・入手しやすい(店頭、ネットでの購入が出来る)
・図が多い
・原因と解決方法が載っている
とくに私が重視したのは「原因と解決方法が載っている」という点です。なぜなら、「どうしてこういった現象になっているのか」を知っていくうちに、だんだんと理解できることが増え、そのうち自分で解決策(補正の方法)を見つけることが出来るようになるからです。自分で考えることが出来るようになるまでは、本や先生と一緒に並走してもらう必要があります。圡屋さんが書いたこちらの本は、一緒に並走してくれる本だと私は感じています。
初心者に補正が難しい理由
補正は単にその人の体にぴったりに合わせればいい、というわけではありません。
補は「補う」という意味ですから、その人が美しく見えるように体型を「補う」ことも考える必要があります。例えば、
・ウエスト位置をほんの少し高くしてバランスをよく見せる
・肩の傾斜が左右違っていたら両方同じくらいの高さにする
などがあります。観察し補正をすることでバランスのとれたパターンにしていくのですが、そもそも初心者には難しいのです。それには2つの理由があると私は考えます。
・パターンの理解不足
・経験値の不足
これらが不足していると、着せ付けた服を見たときに補正が必要なのかどうかの判断が出来ません。右も左もわからない初心者に、補正というほどしんどい作業はありません。ここで私はダメなんだ、と自信を無くしてしまう人がいたら本当にもったいないことです。
補正が難しいと感じるのは、初心者だけではない
@illustAC
そう、このテーマ、実は洋裁教室の先生たちでさえ苦労していました。
私が以前、洋裁教室を運営している先生方とのオンライン会に参加したときのことです。テーマ別にみなさんが感じたことを発表されていたのですが、私はあることに気が付きました。
洋裁の先生方が、口をそろえたように言っていたことがあったのです。
「作った原型が合っていなかった」
「補正は難しいと感じた」
「原型が合わずにもう一度補正をし直した」
…あすかたさん、私たちはだまされないよ。補正がテーマだったんでしょ?
確かに、補正がテーマだったら私は全く驚くことはなかったはずです。
そうなんです。この学習会、補正のテーマではないのにも関わらず、みなさん口をそろえたように補正の話をしていたのです。
洋裁の先生方でさえ「補正」について悩んでいたというのに、みなさん驚きませんか??
補正のための「方法・思考」を教えてくれるのがこの本
そんな補正に関して、大切なテーマであるにも関わらず実践的に活用できる書籍は少ないのが現状です。
そんな中で圡屋さんが書いたこちらの本は、ケースバイケースも書いてくれていますし、なんなら手書きの文章で書き込んでいたりもして、本当に「理解してほしい」という気持ちが表れた本だなぁと感じます。
また、中身を見てもらうと「絵が古い?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。正直、私ははじめ古い本なのかな、と思っていました(すみません)。誤解のないように言いたいのですが、この「古さ」が私は信頼のおけるポイントの一つだと感じています。
「補正」は今に始まったテーマではありません。人々が洋服を着るようになってから今日まで、付きまとってきた問題のはずです。長く服作りの人たちが対面してきた問題に対して、答えに新しいも古いもあるはずありません。
この本は、長年培ってきた知識、知恵がある人達が作ったものだと感じます。いままでのストックを出してきてくれているかのような、この本にはそんな雰囲気を感じさせられる本です。なので古さを気にした方がいたら、気にしないで!と私は言うでしょう。
補正しよう!
はじめにお伝えした通り、原型は「たたき台」です。補正をしなければ、着心地のよい服には仕上がりません。私も含め、始めから補正が完璧に出来る人はいません。難しいのは承知の上、量をこなして一緒に上達していきましょう!
美しく着やすい 型紙補正
ブティック社 / 圡屋邦子著
定価:1,650円(税込)
2024/10/2 追記・編集 ASUKATA 内野
ASUKATAでは、賢く服を買い、長く愛用するために「服活」として、服を作る立場から情報を発信しています。